やっと歌がわかってきたわ

レコーディングは全曲アナログ 

レコーディングディレクター 福住哲弥

ロンドンのレコーディングスタジオにて

 「やっと歌がわかってきたわ」
 『つぐない』『愛人』のヒットを出した頃、30歳になったテレサは、そう言って私に微笑みかけました。今振り返れば、歌手として最も充実していた時期で、自信に満ちていましたね。
 約250曲手掛けたテレサの歌は、すべてアナログでレコーディングをしました。彼女の深みや柔らかさのある歌声は、デジタルでは表現できないと思ったからです。
 『時の流れに身をまかせ』のレコーディングは一発OK。その直前、テレサはホテルのプールで泳いでいました。もちろん、遊んでいたわけではありません。体をほぐしたほうが発声しやすいという理由です。プロ意識が非常に高く、海外の一流のボイストレーナーを訪ねては、もっとうまくなりたいと指導を受けていました。国境を越え、アジア中で人気を博してもなお、歌うことに対してストイックな姿勢を貫き通していました。

レコーディングが終わるとスタッフ全員で食事を楽しんだ。右から3人目が福住氏
ロンドンのレコーディングスタジオにてレコーディングが終わるとスタッフ全員で食事を楽しんだ。右から3人目が福住氏
2015(平成27)年6/20『週刊現代』

 この記事の写真のキャプションにある「ロンドンのレコーディングスタジオ」は、EMI/Abbey Road Studiosです。1984年に、『愛人』のレコーディングをしました

2023年11月13日Articles,People,Trivia,Words

Posted by teresateng