「生半可なことで妥協しないプロ」 『週刊読売』1985.2.10号
歌詞も歌い方もセクシー過ぎたため中国で
週刊読売 1985.2.10
“精神汚染”追放運動のやり玉にあがって
いた彼女の歌は、最近ようやく解禁になっ
たという(渋谷公会堂楽屋で)
その昔、がめついといおうか、当たり前といおうか、自宅に「前金」が振り込まれたことを確認してからでないと、来日しないアメリカのミュージシャンがいた。テレサ・テンの場合は、こんな話は聞こえてこないが、生半可なことで妥協しないプロフェッショナルであることは事実である。仕事に関して、それが実行に移るまでは、すごく慎重。そして、いざ仕事に入ったら真剣。話がまとまったら、付き人の女性一人を連れて各国を〝歴訪〟する。各国との仕事の契約に関する総合オフィスはロサンゼルス、そしてプライベート・オフィスはシンガポール。このふたつのオフィスで、東南アジア、アメリカ、そして日本の年間スケジュールが決められる。
慎重であるという具体例として、彼女は日本でコンサートのプランはない。レコード・キャンペーンのために、去年なら6回、来日したというのに、ステージの計画はないというのは「つぐない」一曲のヒットだけでは、客席が満員にならない、というヨミである。
四十九年に「空港」のヒットで新人賞を受賞したが、これはもう「過去」と考えているのだろう。三月一日発売予定の新曲「愛人」
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を汚染するといわれたことが話題になったが、これは、それだけ表現力があるということ。元々は透明感のあるクリスタル・ボイスで聞く側に心地良さをあたえてくれる音色である。ポップスのフィーリングを持った〝エンカ・シンガー〟である彼女に、モサモサしていると、日本の歌手は負けてしまうかもしれない。彼女の「存在」は日本の歌手にとって、いい刺激になっている。
週刊読売 1985.2.10
遠山一彦(音楽評論家)
注・XXXXXXXXXXXXXXX は読み取れない2行
2枚の写真のキャプション。
東京・六本木でLP『愛人』(ト
週刊読売 1985.2.10
ーラスレコード)のジャケット
撮影中のテレサ。赤道直下のシ
ンガポールから真冬の日本へ来
て、寒さにとまどっていた。
▲昨年暮れの有線放送大賞も受賞
週刊読売 1985.2.10
した「つぐない」のヒットで、
すっかり歌謡番組の常連となっ
た。歌のうまさは誰しもが認め
る(21日、日本テレビ「トップ
テン」のリハーサルで)
最後の写真のキャプションに「21日、日本テレビ「トップテン」のリハーサルで」とあるが、その実際の番組は以下のもの。1枚目の楽屋での写真と同じ服装をしている。