渡辺プロ会報『ヤング』
1978年
1月号
自筆サイン
2月号
ファン・インタビュー
<第一一三回>
テレサ・テン
歌の心はどこの国でも変わらないョ!!
来日五年目。日本人の情感にすっかり根をおろした歌唱が人気のテレサ・テン。今年は元旦から日劇の「ドリフターズショー」に出演し人気を呼んだ。千秋楽2日後、西銀座「メイツ」出演前の彼女にインタビューしてみた。
「メイツ」に近い喫茶店「サンバード」。待ちうけるファンの川井さん御夫妻と大学生の大熊君はやや緊張気味。そんな中を寒さには弱いテレサが毛皮のコートを着て現れた。簡単な自己紹介のあと質問はさっそく開始された。
☆
川井(一) 暑い台湾で育ったテレサにとって、今日みたいな寒い日はどうで すか。
テレサ やっぱり弱いですね。寒いのあまり好きじゃない。だから日本でも沖縄が一番好きね。暖かくて……。
大熊 沖縄が好きなら泳ぎはできますか
テレサ できます。でも海ではできない。つかまるところないし、あぶないです よ。海、まわり何もないからこわいね。
大熊 スポーツは他に何が好きです?
テレサ テニスとか卓球とか。でもあんまりうまくないね。去年、正月番組の運動会で体力無いと思ったから、今年こそスポーツしたい。マラソンでもしたいんですよね。
川井(ひ) とても素敵なプロポーションだけど、食事は制限なさっているの。
テレサ 別にね、全然かまわないんですよ。私なんでも食べるの。お腹いっぱいいになったの時は、あっいけないと思うけど、また食べちゃう。
川井(ひ) お料理もなさるんですか。
テレサ たまにしかしないですね。全部お母さんにまかせちゃうから。それからウチの台所小さいですよ。2人いると混むんですよ。お母さん太ってるでしょ。だから。
川井(一) やっぱり中華料理?
テレサ そうね。ウチのお母さん料理う まいからね。外で食べる時は日本料理 ね。茶碗蒸しとか焼き魚ね。外の中華 料理まずいね(笑い)
川井(一) やっぱり日本人の好みに合 わせて作ってるんでしょうね。私も戦争中、中国にいたけれど塩味なのね。
テレサ へーッ。どこにいたの。
川井(一) 山東省に四年程ね。
テレサ ウチのお母さん山東省出身よ。中国語しゃべれる?
川井(一) もう忘れちゃったね。
大熊 テレサはだいぶ日本語うまくなりたけど、どんな風におぼえました?
テレサ 私はみなさんの話をよく聞いていたね。それでおぼえた。それから車で外走っている時、看板のひらがな、カタカナを勉強したの。漢字は読みかた違うけど意味わかるから。
川井(ひ) 日本の文化は中国から来たものだしね。親戚のようなものですね。
大熊 だから、テレサが日本の演歌を歌っても異和感がないのかな。歌詞のひとつひとつの意味はわかりますか。
テレサ わからない言葉もあるけど、全体的に意味をつかもうとする。いい歌 はフィーリングでわかるね。
川井(一) 歌心はひとつということだ。
川井(ひ) その心を勉強するために日本に来ているんだっていっていたんですよね、いつか。
大熊 台湾では男性4人の兄弟の中で育った女性でしょ。台湾の男性と、日本の男性比べてどうですか。
テレサ なんかこう、日本の男性すごくエバってるね。(笑い)
大熊 台湾の人はもっとやさしい?
テレサ やさしいっていうか。例えば男性の方から話しかけて来るでしょ。こっちは、女の子から話しかけても返事
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したくなさそうな、エバっている感じね。うまくいえないけれど。
大熊 このまえラジオで聞いていたんですけれど、テレサの理想の男性はいろいろ注文が多いみたいですね。本当はどうなんですか?(かなり真剣)
テレサ 本当はね、そうねえあまり注文ないですよ。どんな人がいいかなあ。
大熊 それじゃ、まず、結婚するなら台湾の人、日本の人?。
結婚する相手は日本人?それとも?!
テレサ 私はねえ、日本人より台湾の人のがいいのかな。やさしい人は日本にもたくさんいるけど、お互いに習慣違うし。
川井(ひ) 結婚して日本に住むわけじゃないしねえ。
テレサ 日本には住みたいと思ってますよ。日本いい国だから。でも言葉通じないですしね。もし日本人と結婚したら旦那さんに悪いね。あまりいい奥さんになれないから。
川井(一) そんなことないでしょう。
テレサ あのね、日本の女性に負けるんですよ。日本の女性やさしいから。日本でのレベルは男性ちょっと高いでしょ。むこう同じだよ。
大熊 そのへんはアメリカっぽいですね
テレサ そうね。ほんと。
川井(一) 中国の山東省にいた頃、見たんだけど、夫婦ゲンカをして旦那さんが多分暴力をふるったらしいんだね。そしたら近所の男性が集まって来て、みんなでその旦那さんの両手を背中に押さえつけて動けなくしちゃうんですよ。すると奥さんがしゃべりたいことをみんなの前でいうわけだ。ウチの旦那は酒飲みでロクに働かないとか大きな声でどなるのね。旦那はくやしがるけれど、ますます強く押さえつけられてね。しまいには参ったというわけ。そうすると仲良く二人で家にもどるんだよね。男性がみんなで弱い女性をかばおうという気持があるのね。
大熊 日本ではちょっと考えられませんね。テレサの初恋はいつごろだったんですか。
テレサ 初恋はね、16の時かな。
大熊 じゃ台湾でデビューしてからのことですね(台湾でのデビューは15才)
テレサ そう。その前はね、あれ初恋かな……片想いだったけど。
川井(ひ) 片想いは初恋よ。
テレサ あっそうか。じゃもっと前かな……(笑い)
川井(一) テレサはいつもお父さんのことはあまりいわないで、お母さん、お母さんっていっているけど、お父さんはどんな人なの。
テレサ お父さん、すごくこわいですよね。心やさしだけど、外見ると(外見は)こわいね。顔もすごいこわいの顔してるの。心から愛しているけど。
川井(ひ) テレサとお母さんで日本にいて、お父さん御不自由なさらないのかしら。
テレサ ちょっとうるさいですね。早く帰って来いっていわれる。
川井(ひ) でもこんなに歌のうまいテレサの御両親だから、家庭環境も音楽には理解があったわけですか。
テレサ お父さんね、京劇(中国の古典歌劇)できるんですよ。お母さんも歌好きですね。
川井(ひ) お父さん、お母さんが年とられたら、どんな親孝行なさいます?
テレサ いわれたとおり、何でもいうこと聞いてあげて、休みだったらどこか出かけるとか、おみやげ買ってくるとかね。日本はどうかわからないけれど、中国は両親を敬うっていう気持ち
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は大切にしますね。
川井(ひ) そうね。中国は親孝行ということ大事にしますね。日本も同じですよ。
テレサ そう、よかったですね(笑い)
川井(一) 私のところは子供も孫もみんな男だから、テレサを娘みたいに思ってるんですよ。
大学祭に出てハンサムな学生にもてたい
テレサ どうもありがとうございます。
川井(一) 私はデビューの頃からのファンで、去年のヤクルトホールのコンサート(4月22日)でファンクラブに入ったんですよ。
大熊 僕は日本大学の経済学部の学生なんですけれど、去年大学祭のショーにテレサが出演したでしょ。あれで本格的なファンになったんです。デビューの頃から好きだったけど。
テレサ あっ、そう。日大楽しかったよ。本当に面白かった。今まで、クラブやキャバレーの仕事が多かったから本当に楽しかった。初めて。学生面白いんですよ。いろいろ質問来るんだけれど「パンツはいてるか?」だって。(笑い) ねっ?(大熊君素直にうなづく)
大熊 でも僕じゃないですよ。聞いたの。(笑い)
テレサ でも私、学生さんと相性ピッタリだと思ってる。同じ年代だし。でもむこうはそう思ってないみたい。演歌っぽいとかね。だから、私の前にリリーズや五十嵐夕紀出てるの時、すっごくにぎやかですよ。みんな。名前呼んだり。私出てきたらジーン(シーンのことらしい)と静かになっちゃって(笑い)(大熊君ややあわてて)
大熊 あのね、本格派が出てきたから、歌聞きたいからね、ヤングの歌手と違 って静かになっちゃったんですよ。
テレサ ホントかなあ
大熊 やっぱりテレサも名前呼んでほしい?
テレサ ほしいよオ(爆笑)やっぱりさびしいですね。すごく。
川井(ひ) それじゃ私達みたいな年寄りのファンは有難くないのかな。
テレサ うん、そうですね(笑い) (スタッフがあわてて『有難くない』の意味を教える)
テレサ あっそうか。感違い、感違い。要するに相手は大学生でしょ。イイオトコいっぱいいるもん(笑い)
川井(一) いたの?
テレサ いたよ。いたもん(と大熊君を指差す)(笑い)
大熊 ホントかなあ(笑い)
テレサ どのへんにすわってた?(笑い)また学園祭出たいなあ。
川井(一) テレサは実力があるんだから、大学祭のようなコンサート的なものでファンを増やして欲しいですね。
大熊 6月から全国五大都市で念願のコンサートが行われるって聞いたけど?
テレサ うん、東京、大阪、名古屋、福岡、あと札幌ね。他のことはまだ決っていないの。それから今日(1月12日)から20日までLPの録音が忙しいの。1月22日から2ケ月くらい台湾に帰るけれど、それまでにシングルのレコーディングもあるし。
大熊 2ケ月というと、むこうで誕生日(1月29日)とお正月(台湾は旧正月)をすごすわけですね。
テレサ うん、あと結婚式も、なんちゃって(笑い)
川井(一) 今年の抱負は?
テレサ いい曲をレコーディングして、素晴しいワンマンショーをやってファンの人によろこんでもらうことです。
大熊 信念というか心がけていることは
テレサ いつも一生懸命、でもマイペースでやることね。
大熊 今年の具体的な目標というかターゲットとしては、なんですか。
テレサ やっぱり「紅白歌合戦」出たいね。レコード大賞もだけど、ムリムリ、10年早いね。
川井(ひ) 最後にファンの人からもらうプレゼントで一番迷惑なものは……
テレサ 人形かな。置き場所ないですよ。それより果物一番よろこびますよ。(笑い)
☆
テレサ自身の三枚目的一面に加え、まだむずかしすぎる日本語もあったりで終始、笑い声の絶えないファンインタビューだったが、そろそろメイツ出演の時刻が迫り残念ながらテレサとお別れ。
しかし、終了後3人のファンを本誌が「メイツ」に招待、満員の観客にまじりショーを充分に堪能した様子だった。
1ページ(雑誌32ページ)下部欄外
◇テレサの好きな日本料理……インタビューにあるとおり、日本に来た当時は茶碗蒸しと焼き魚(サケ)ばかり食べていたが、さらに牛肉のしゃぶしゃぶを食べてから大のしゃぶしゃぶ狂いになってしまった。とにかく台湾に帰っても「しゃぶしゃぶたべられないことだけが本当に残念ですね」というほどなのだから相当な好物なのだ。
2ページ(雑誌33ページ)下部囲み
■ファン代表■
川井一夫 東京都杉並区 60才・公務員
川井ひな子 東京都杉並区 60才・主婦
大熊一男 東京都港区 23才・大学4年
2ページ(雑誌33ページ)下部欄外
◇テレサのギャンブル……乗馬は好きだけど競馬は全くやらない。ギャンブルらしいものといえばただひとつ、麻雀。本場仕込みでさぞ強いのかと思いきや「最近おぼえたの。全然勝てないよ。先生●いから。(お母さんに教わりながら自宅でやるとのこと)お母さんもあまりうまくないし、でも麻雀とても面白いネ」
3ページ(雑誌34ページ)下部欄外
◇テレサの一番うれしかった事……「レコード大賞新人賞もらった時。一番感激したよ」
◇テレサのヘアースタイル……「最近,自分で髪切ってるね。去年の暮れ,枝毛が多くなっちゃって少し短くしたの」
●ステージグラフ
ドリフターズ!全員集合!!
ラムちゃん、テレサもいっしょだよ(日劇)
今年も大いに笑わせました! 新春恒例「ドリフターズ!全員集合!!」が元旦から10日間、日劇で開かれた、初笑い公演として人気のこの舞台も、今年はハワイの妖精アグネス・ラム、テレサ・テン、キャンディーズ・ジュニアらを迎え、華麗ににぎやかに…。正月休みのチビッ子ファン、家族連れで連日満員の盛況。バラエティのあるコント、ギャグに爆笑の連続だった。
(写真キャプション)
テレサ・テンは「岸壁の母」を熱唱
1978年1月14日のフジテレビ「8時だョ!全員集合」で「岸壁の母」歌唱しています。
5月号
タイトルの
おもいでの映画館
第25回
テレサ・テン
がかろうじて読み取れるだけで、本文は読み取れません。『風と共に去りぬ』『ゴッドファーザー』について触れられているようです。
7月号
テレサ・テンが古来の儀式でヒット祈願
6月1日に新曲『夜のフェリーボート』を発表したテレサ・テン。このヒットを祈願して「拝神」という中国古来の儀式を披露。お祈りの効果はすぐあらわれるようで、ヒットの期待も大きい。